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Channel: レッツゴー!元日本洋楽研究会
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DVD「ビッグ・フィッシュ」

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葬儀で参列者が笑っているシーンが象徴していた。


父の大ボラ話を1000回も聞かされて辟易としているのに
結婚式でも同じ話をスピーチをされて、以来父子断絶の息子。
とにかくこのオヤジは家族にも作り話ばかりするのだ。
魔女や巨人やオオカミ男のサーカスや住民が裸足の町、
息子の誕生した日に釣り上げたビッグフィッシュ。
あまりにも荒唐無稽なのでいつまでそんな出鱈目な作り話を
語り続けるのかと息子は思っていた。
その父親の最期に、息子は初めて父親の話の真実を探り始める。


ティム・バートンの映画「ビッグ・フィッシュ」の日本公開は
2004年なのでちょうど10年前になる。

その頃の私は56才のまだギトギトに油っぽいサラリーマン時代で
休日に映画やDVDを観るなんて気持ちの余裕はなかった。
ある意味自分もこの映画のオヤジのように
仕事という名の半分イリュージョンの世界にいたせいと思う。

公開から10年も経ち、レンタルで初めてこの映画を観て、
しばし考え込んだ。
(こいつは簡単に感想は書けない・・・)
この映画は勿論ファンタジーだし家族愛が重要なテーマなんだが
究極的には「死に方」「死生観」もっと言うと「人生観」ではなかろうか。
自分がこの年になってるからこそそう捉えたのだと思う。




オヤジは若い頃から空想と現実をごちゃ混ぜにしている。
超現実主義の息子にはそんな「ウソ」が許せない。
でも最後に微妙な「真実」を知ることになる。


「Fish story」という英語にはホラ話という意味があるらしい。
また「Big fish in a little pond」は井の中の蛙という意味らしい。
原作のタイトル「Big Fish」も当然その意味を含んでいる。

この映画のクライマックスである
「父から引き継いだ息子のホラ話(作り話)」では結構涙するし
自分の葬式に自分の人生が作った幻、空想、虚構、フィクションの
物語の登場人物たちが実は存在していてみんな集まって笑いながら
話をしている、なんていいなあと思わせてくれる。
人生は最後まで家族や仲間と楽しくという寓話、童話、おとぎ話。

実は<夢とか空想のつまり妄想と現実の区別がつかなくなる>
のは認知症の特徴の一つでもあるのだが
この映画を観ると人生の最期はそれでいいかもとも思えるのだ。
少なくとも、理研の副センター長なんかに比べれば
プライドも絶望も孤独もなく、ウソと真実の狭間ゾーンに生きた
この映画のオヤジの方が遥かに幸せだと思える。
あれ?ファンタジーとリアルを混ぜちゃいかんか。

話を語りすぎて本人が話そのものになってしまった
(A man tells his stories so many times that he becomes the stories)

しかしヤバいな、
「フィールド・オブ・ドリームス」と並ぶくらいいいのに
この映画そこまでは評価されていないんじゃないか。
どこのTsutayaにも旧作であるはずだから、まだ観ていない
特に還暦過ぎた方には是非オススメしたい。

https://www.youtube.com/watch?v=B62LeXzhmew



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