2時間半にも及ぶ映画「燃えよ剣」を見終え
なんとも言えない虚しさを覚えながら映画館を後にした。
音楽も映画も演劇も本も身内だけの時は自分の感想を忌憚なく話すが
こういう場ではできるだけ否定からは入らないようにしている。
それに習ってこの映画については公開を2年も待っていたけれど
「私には合わなかった」
司馬遼太郎「燃えよ剣」の最初の刊行は1964年3月、
ビートルズの日本デビューと時期がピッタリ重なる。
そういう時代にこの物語は生まれた。
以来「燃えよ剣」は何回もドラマ化、映画化、舞台化され、
また何回もの「新選組ブーム」をくぐり抜けてきた。
それらの全部を見ているわけではないので一概には言えないにして
今回も改めて思ったのは、
やはり1970年のNETテレビドラマ「燃えよ剣」(全26回)
上回る映像作品は生まれていないということだった。
何故か考えてみた。
1970年という時代背景と社会状況もあるかもしれないが
あのTVドラマが50年以上も新選組作品の
最高傑作でいられることの最大の要因は
「結束信二」という脚本家の力だと思う。
太平洋戦争の陸軍特攻隊員の生き残りである氏の脚本の多くは時代
東映では市川右太衛門、片岡千恵蔵、
それが1964年にTV界に身を投じて(ここも1964年だ!)
「俺は用心棒」「
「新選組血風録」から「燃えよ剣」に至る。
この人の書く脚本は「無常感」「虚無感」が余韻として空気中に残る。
それに比べると今回の「燃えよ剣」は
原作のエピソードと史実をすべて追いかけ2時間半に凝縮している
新選組ファンなら目をつぶってでも話せるいわば新選組年表になって
結束信二はその1970年のTVシリーズ「燃えよ剣」で
創作キャラクターとして「裏通り先生」と「伝蔵」を創り出し
ナレーションの代わりに会話で状況説明をさせていた。
このオリジナルキャラが活き活きと新選組の中で存在感を見せていたのに対し
司馬遼太郎のオリジナルキャラ「お雪」と「七里研之助」は
今回の映画では中途半端で影が薄かった。
(あ~あ、書いちゃった)
ついでに書くならば、岡田准一は刀より拳銃、
それと新選組の幹部の制服は黒だったとか
突然史実とおぼしき新説を持っ
とにかく結束信二の「燃えよ剣」を上回る「燃えよ剣」は、ない。
古いものから抜けきれない私でも、これだけは真実だから仕方ない。
脚本 結束信二
音楽 渡辺岳夫
土方歳三 栗塚旭
沖田総司 島田順司
お雪 磯部玉枝
劇伴と主題歌
https://www.youtube.com/watch?
「シノビリカ いずこでみても 蝦夷の月」 豊玉(土方歳三)