ちょうど50年前
学生時代の先輩が作ったラジオドラマの中に
今でもハッキリと覚えているシーンがある。
山口県から単身上京する主人公が
「次は終点東京です」の列車アナウンスを聞いて呟くセリフ
「東京だ・・」
そこにいきなりカット・インする曲が
「シャララシャララ」のイントロで始まる
渡哲也の「東京流れ者」(1966年)だった。
https://www.youtube.com/watch?v=BGPXsjEt2AU
突然大音量で流れた歌謡曲に度肝を抜かれたこともあるが
初めて上京する主人公の東京に対する憧憬、
一人長旅の末にそこに到着した万感の思い、
熱情と野望と同時にある不安と恐怖、
田舎出身の私は先輩のそんな心象に共鳴したのだと思う。
糸井重里の「TOKIO」も遠くない。
そんなわけで
渡哲也の訃報が「西部警察」や石原裕次郎との師弟関係が中心で
代表曲が「くちなしの花」であることに何の異存もないのだけれど
私にとっては石原プロモーションに参加する数年前の
この「東京流れ者」こそが渡哲也だ。
映画の「東京流れ者」(1966年)は
川内康範の原作脚本を鈴木清順が監督した、まあ一言で言えばヤクザ映画。
当時東映が突っ走っていたその路線の日活バージョンとも言える。
主人公が耐えて耐えて最後に・・というパターンは同じでも
健さんの着流しに長ドスと違い、日活らしくスーツでピストルだった。
その鮮やかなスーツを初めとした色使いが鈴木清順で
ストーリーはもう覚えていないがいい映画だったという印象だけ残っている。
「東京流れ者」映画
ちなみに曲「東京流れ者」には竹越ひろ子と
藤圭子のバージョンがあり、それぞれ歌詞が違う。
そしてそれぞれ味わいのある歌詞になっている。
こういうのも珍しい。
今から思えば私の「東京だ」は、高崎線が赤羽に着く前、
荒川の鉄橋を越える時の「あ、そろそろだ」だったから
先輩のラジオドラマほどのドラマチックな感覚はなかった。
初めてNYやロンドンに行った時の
飛行機の車輪が滑走路に着地した瞬間がそれに近かったかもしれない。
でも頭に流れたBGMは「東京流れ者」ではなかった。