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水戸天狗党を知らない

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プログレッシヴ・ロック・ファンとして有名な作家

伊東潤の「義烈千秋~天狗党西へ」を読んだ。

 

 

どんな本かと書く前に、

例えば今日の国公立大学二次試験で

もしこんな問題が出されたらどう書けるだろうか。

 

「<水戸天狗党>について知りうることを400字以内で述べよ」

 

私ならせいぜい「幕末」「水戸藩」「尊皇攘夷」

あたりの単語を使ってなんとかごまかして書くのが精一杯と思う。

それじゃ絶対に400字はもたない。

そのくらい名前でしか知らなかった「天狗党」のおおよそを

この本によって理解した。

同時に(あ~あ、オレの歴史好きもこの程度なんだ)とも再認識した。

 

歴史上、幕末の舞台は西日本で、天皇のいる京都がその中心だった。

坂本龍馬も西郷隆盛も桂小五郎も高杉晋作も活躍していた場は京都で

東日本とりわけ関東で幕末に何が起きていたかは

小説やドラマではあまり取り上げられることがない。

 

尊皇攘夷の魁として筑波で挙兵した水戸の天狗党は

徳川慶喜に会って志を訴えるべく京都に向かって進軍、

その途中で慶喜に裏切られ投降した挙げ句に斬首処刑され

「天狗党の乱」なんて言われるようになるのだが

その「乱」の起きたのは1864年5月、投降が12月、

翌年の3月までには800人以上の処罰が終わっている。

 

1864年だと?「1864年」なら私だって知ってるぞ。

ビートルズの日本デビューのちょうど100年前だ。

じゃなく、

天狗党が京都に向かって転戦している7月に

「長州征伐(11月まで)」「池田屋事件」、

8月に「禁門の変」が起きた幕末のポイントとなる年だ。

又、天狗党が投降したわずか1ヶ月後の1965年1月には

高杉晋作が長州の功山寺で挙兵しクーデターに成功している。

天狗党の決起、仕方ないけど半年早かったかな。

 

新選組が池田屋を襲撃した頃

また蛤御門で長州がボロボロにやられていた頃

天狗党は西行のどのへんにいたんだろう。  

 

(水戸市史(中巻)」400頁「第62図天狗党西上略図  )

 

ちなみに天狗党蜂起の1年前に新選組が京都に入京。

世界史で言うと1864年という年は中国では太平天国の乱が鎮圧され

アメリカはまだ南北戦争の真っ最中だ。

 

歴史はズームインもいいが

たまには俯瞰というのか鳥瞰というのか

少し離れて眺めてみるのも面白い。

日本の幕末だったらせめて東日本も入れて眺めたい。

 

なんてことを思いながらの結論は

天狗党の首謀者、藤田小四郎は過激派としてカッコいい。

直線的にしか進めないところは久坂玄瑞とタメかもしれない。

 

 

だけど過激派というのはとかく内部分裂をするものなのだな。

逆に投降した相手で古武士然とした加賀藩士の永原甚七郎もカッコいい。  

一方、一番ダメなのはやっぱり徳川慶喜。

 

ところで、この伊東潤という歴史小説家はそのジャンルでは

それほど有名ではない人物や城も主人公にして小説に仕上げている。

関東の敗者にスポットが当てられることも多い。

武田家滅亡、今川家滅亡、北条家滅亡、さらに芦名家滅亡。

人物なら平将門、高師直、太田道灌、北条氏規、幕末だと大鳥圭介とか。

私の歴史の先生みたいな感じだ。

 

この人は音楽を聴いてイメージして小説を書くという。

クリムゾンやツェッペリンから始まり

イタリアン・プログレまでその範疇に入るという。

池田屋事件を書いた時のメインの音楽はこれだったという。

 

「旋風」トランス・アトランティック

 

https://www.youtube.com/watch?v=iXobFPSMALE 

 

これを聴きながら近藤や沖田、永倉、藤堂なんかをイメージしたのだろうか?

このバンドのことは私は知らないので政則さんに聞かないとわからない。

しかし、珍しい作家ではある。


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