映画「エリック・クラプトン~12小節の人生」
母親に拒絶された少年時代の孤独、
親友ジョージ・ハリスンの妻への恋、
そして最愛の息子コナーの死。
天国と地獄を行きつ戻りつするような、
初めて自分の居場所を見つけた今だから振り返ることができる、
エリック・クラプトン自らが語る、音楽と愛と魂の軌跡。
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本人と証言者のインタビューを柱にしながら
発掘した資料映像で構成された、
ドキュメンタリー映画というよりむしろTV特番の体。
ボブ・
ジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズを観ながら
「このギタリストはいい」と言ってるシーンとか
クラプトン本人がギターのフレーズを説明してるとか
息子コナー君の愛らしすぎる在りし日の動画とか
パティ・ボイドはもっと可愛い写真あるよなとか
グラミー賞はドカーンと盛り上げなきゃあとか、
あんなコカインのリアルなシーンなんていいのかねとか、
終盤の方にチラッとウドー社長が写ってたよねとか
映画を観た者同士で話せるネタは多いものの
そのほとんどが自伝などでも有名なエピソードで、
それでもそれなりに演出してくれればいいのに
何故かこの映画は暗く平坦に中だるみしながら淡々と進行する。
映画館の客席は9割が男性、それも年配者多くクイーンとはまったく違う。
もったいない。
映画に映像や音声で出てくるBBキングもジミ・
デュアン・オールマンもジャック・ブルースも、
大親友だったジョージ・ハリスンももういない。
クラプトンはその人たち以上のドラッグ&アルコール依存症だったから
今も生きているのが不思議なくらいだ。
「自殺しなかったのは死んだら酒が飲めなくなる」と言ってたそうだ。
1976年のバーミンガムでのステージで観客とやり合うシーンがある。
ベロベロに酔っ払っていたせいと伝えられたその時の発言
ここには書けないような言葉で移民反対を訴える人種差別そのもの
おいおい、BBキングはどうなんだ「アイショット・ザ・
どうなのよと誰でも突っ込み入れたくなるような発言だった。
でもそれが「ロック・アゲインスト・レイシズム」誕生のキッカケになる。
いわばパンクが爆発するキッカケにもなったのだから皮肉なものだ。
グラミー賞を18回も受賞し、いい曲も多いスーパースターだけど
個人的にはクリーム時代のクラプトンが一番好きなので
「クリームは攻撃的過ぎた」みたいなニュアンスのことを
クラプトン本人が言っていたのが、まあ残念ちゃあ残念。
曲はこの映画観た後ならさすがにこれだろうな。
「ティアーズ・イン・ヘヴン」(1992年)