この本が売れている。
引用しているデータを吟味しない限り
「応仁の乱」と違って1時間もあれば読み終えられる。
テーマはオジサンの「孤独」だ。
孤独と言っても「独居」という意味ではなく、
仕事でしか社会とつながっていなかったオジサンが
退職した結果、何をしていいのかわからなくなり
家に引きこもり、寄りかかるのは妻だけ、そして孤独に陥る・・
その理由と、健康へのリスクと、対策を解説している。
それって世界的な傾向だそうで
アメリカ人30万人を対象にした調査では
人とのつながりの乏しい「孤独」は
喫煙、大酒飲み、運動不足、肥満などより
健康には一番悪いという数字が出ている。
イギリスでは2018年1月
「孤独担当大臣(Minister for loneliness)」なんてのまでできた。
日本の場合、OECDの調査によれば
定年退職後「ほとんど人と付き合わない」比率は15.3%と
世界平均(6.7%)の2倍以上あり、加盟国中トップという。
(オランダ2.0%、
会社以外にコミュニティのなかったオジサンの
「コミュ力(こみゅりょく)の欠如」が原因と結論づけ
その対策など書かれているが、
書かれたってその対策すらできないオジサンにとっては
解決にはならないだろうに、とは思う。
友人、家族、知り合いとおしゃべりしないのが良くないらしい。
ありがたいことにおしゃべりな私にはまったく関係ない本だった。
さて、積極的で豊かな退職後を過ごしている友人の一人
へーちゃんの写真展覧会に行ってきた。
事前に彼からもらっていたLINEには
「俺のプリント術を見て欲しい。エプソンのラボで顔料プリンターを使い、
A2サイズのベルベット・ファイン・アート紙に自分で印刷してみた」
とあった。
ゴメン、プリント術なんて私にはわからない。
わからないけど昨年1ヶ月以上に亘る北海道撮影旅行の
12枚の写真が素晴らしい。
これもそのうちの1枚「利尻冨士と三日月」
これじゃよーく見ないと利尻富士の右上の三日月は見えないが
へーちゃんの「プリント術」で写真は風景写真のレベルを超え
音楽が聴こえてきそうだしアイヌの物語のように幻想的だ。
退職するまで芸能プロダクションの社長で
60歳過ぎてから写真教室に通い始めた人の作品とは思えない。
「退職したら何をしていいかわからない孤独」とは無縁だ。
お気楽な趣味といえば確かに趣味ではあるが
強引にまたジョー・ストラマーの言葉をこじつけるなら
「トライすらできないヤツがやっている人間に何を言えるっていうんだ?」
展覧会は明日まで。
聖蹟桜ヶ丘京王ショッピングセンター。
私もへーちゃんに負けていられないと思う。