Quantcast
Channel: レッツゴー!元日本洋楽研究会
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2743

レッキング・クルーは千手観音か

$
0
0

LAのセッション・ミュージシャン集団<レッキング・クルー>

ビーチボーイズ、バーズ、ママズ・アンド・パパス、
ゲイリー・ルイスとプレイボーイズ、ポール・リビアとレイダース他
多くのバンドのレコーディングの実際の演奏は彼らがやっており
彼らが参加したアルバムは60年代から70年代にかけて
6年連続でグラミー賞「レコード・オブ・ザ・イヤー」に輝いている。

それでも当時は<スタジオ・ミュージシャン>という概念がなく
名前もクレジットされなかったことで無名に近いこの集団の映画が
「レッキング・クルー 伝説のミュージシャンたち」だった。

https://www.youtube.com/watch?v=SIlcfBlIfJI

この映画で自分の音楽史観が変わるほどの衝撃を受けた私は
原作の本を借りてやっと読み終えた。

「レッキング・クルーのいい仕事」


中心人物は、ハル・ブレイン、キャロル・ケイ、グレン・キャンベル
などだが、多くはフィル・スペクターにページが割かれている。

ジャズ・ギタリストになる夢を諦めた高校三年生のフィルが
友人とテディ・ベアーズを組んで発売したシングル
「会ったとたんに一目ぼれ」が全米No1のヒット(1958年)
NYでプロデューサー修行をした後でLAに戻り
<レッキング・クルー>たちを集めて仕事を始めた。

でもフィルについては他にも本があるしここでは省くとして
レッキング・クルーのプロ技のエピソードを一つ

3時間のスタジオで5曲仕上げる仕事を受けた。
残り10分であと1曲あげなければならなくなった。
ところがそこでテレコの具合が悪くなり残り3分になった、
滑り込みワンテイクで曲が完成した。
2分40秒のその曲はシングルカットされ全米第3位になった。

「パサディナのおばあちゃん」ジャンとディーン(1964年)

もう一つ

ダンヒル版のモンキーズとして売り出されたグラスルーツは
(誰かの曲を誰かが演奏して自分たちのバンド名で発売される)
こんなことでいいのか!?とまさにモンキーズと同じ疑問を持つ。
そしてギタリストは脱退する。わかる。
彼らのヒット曲「今日を生きよう」は
日本でもテンプターズで有名だ。(1967年)


数百を超えるレッキング・クルーが関わった曲の中でも
代表的なのはほんの一部でも例えばこんな感じだ。

「悲しき闘牛」ハーブ・アルパートとティファナ・ブラス 1962年
「ヒーズ・ア・レベル」クリスタルズ
「サーフィンUSA」ビーチボーイズ 1963年
「ビーマイベイビー」ロネッツ
「パサディナのお婆ちゃん」ジャンとディーン 1964年
「夢のカリフォルニア」ママス&パパス 1965年
「恋のダイアモンド・リング」ゲイリールイスとプレイボーイズ
「明日なき世界」バリー・マクガイア
「アイ・ガット・ユー・ベイブ」ソニー&シェール
「グッドバイブレーション」ビーチボーイズ 1966年
「夜のストレンジャー」フランク・シナトラ
「憎いあなた」ナンシー・シナトラ
「ビートでジャンプ」フィフス・ディメンション 1967年
「花のサンフランシスコ」スコット・マッケンジー
「ウィチタラインマン」グレン・キャンベル 1968年
「すてきなバレリー」モンキーズ
「悲しき初恋」パートリッジファミリー 1970年
「明日に架ける橋」サイモン&ガーファンクル
「嘆きのインディアン」レイダース 1971年
「カリフォルニアの青い空」アルバートハモンド 1972年
「イエスタデイ・ワンスモア」カーペンターズ 1973年
「追憶」バーブラ・ストライザンド 1974年
「愛ある限り」キャプテン&テニール 1975年

このままでレッキング・クルーのコンピレーションができる。
極論を言えばヴォーカル以外は同じ人たちが演奏している。
(千手観音かい。まあ、何十人もいるわけだけど。)

S&G、カーペンターズ、ソニー&シェール、シナトラなんかは
いいんですよ、バックの演奏ってことで
ただバンドはどうしても自作自演と思い込んでいたこともあり。

もちろん最初から最後まで全部そうだったわけではなくて
バーズもアルバム12曲中10曲はメンバー自身の演奏だそうで。
他のバンドもデビューの頃限定っていう話なのだがそれにしても。

60年代からの私の個人的な洋楽史とほとんど重なる分だけ
ちょっとまだ混乱の中にいる

「ミスター・タンブリン・マン」バーズ
全米No1(1965年)
そういやあ「ドント・ウォーリー・ベイビー」と音が似てるかな。



ブライアン・ウィルソンが車の中で
「ビーマイベイビー」を聴いてショックを受けた時
隣にいたガールフレンドが
「ドント・ウォーリー・ベイビー」と言ったとか言わなかったとか
バーズのロジャー・マッギンはビートルズの
「ハードデイズナイト」の映画を見てエレキに変えたとか
今までに紹介されてる話も多いが、
映画では語られていない目からうろこの話も多い。
是非お薦めしたい本だ。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2743


<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>