映画「さざなみ(原題;45 Years)」
そもそも老人だけの映画なんて全く私の好みじゃないが
この映画は知的で、緻密で、テンポよく、怖い。
***
イギリスのノーフォーク州ノリッチ。
田園風景が広がる。
週末に結婚45周年の記念パーティを迎える
子供はいないが仲のいい平凡でリベラルな老夫婦
元工場勤めの夫ジェフと元教師の妻ケイト、70歳前後か。
月曜日の朝、ジェフのもとに一通の手紙が届く。
50年前にスイスの雪山のクレバスに落ち行方不明になった
当時のジェフの恋人カチャの遺体が発見されたので
確認に来て欲しいと。
5年前に心臓のバイパス手術を受けたジェフは
最近では足も弱っていて行けそうもない。
夫婦が出会う前のはるか昔の事件だったのに
月、火、水・・・と時が過ぎるうちに
夫婦の間に生じた微妙なさざなみが
日を追って大きくなり息苦しくなるような展開を見せる。
夜中に屋根裏で昔の写真を見ているらしいジェフは
ケイトが気づけば禁煙していたタバコを吸っている。
旅行代理店にも内緒で行っているようだ。
日を追って大きくなり息苦しくなるような展開を見せる。
夜中に屋根裏で昔の写真を見ているらしいジェフは
ケイトが気づけば禁煙していたタバコを吸っている。
旅行代理店にも内緒で行っているようだ。
職場のOB会にも出たくない。
会社は合理化でジェフのいた部門もなくなっていた。
それを許した組合も意気地無しだ。
同僚だった友人は今ではウクレレにうつつをぬかしている。
過去と現在。
同僚だった友人は今ではウクレレにうつつをぬかしている。
過去と現在。
氷の中にいた元恋人はきっと昔の姿のままのはずだ。
ケイトは屋根裏でカチャのスライド写真を発見してしまう。
画面の左に今のケイト、右に昔の若いカチャ。
もう一度見直すと、カチャは妊娠しているようだ。
画面の左に今のケイト、右に昔の若いカチャ。
もう一度見直すと、カチャは妊娠しているようだ。
ケイトも禁煙していたタバコを庭で吸う。
結婚45周年のパーティ当日、
ジェフは「僕の選択は正しかった」とスピーチしながら涙を流す。
ジェフは「僕の選択は正しかった」とスピーチしながら涙を流す。
それに気づくケイト。
パーティのラストに二人が踊ったのは45年前と同じ曲だった。
その時のケイト・・・
その時のケイト・・・
***
これでアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされた
シャーロット・ランプリング。
シャーロット・ランプリング。
目と表情の演技、うまいんだ、これが。
怖いんだ。
怖いんだ。
10年前だったらジェフはスイスに行っただろうが
もし自分だったらどうするだろうと
いつの間にか自分をジェフにオーバーラップさせている。
平穏な老後に突然「現われた」昔の恋人によって
とっくに諦め捨てて忘れてた当時の青い自分が
蘇えってしまった
何の不平不満もないはずのその後の自分の人生に
まだ残っていた悔いとは言えない疑問。
蘇えってしまった
何の不平不満もないはずのその後の自分の人生に
まだ残っていた悔いとは言えない疑問。
昔の恋人の遺体が発見されるなんてことはないにしても
小さな似た類の話はどの夫婦にも起こりそうだから
小さな似た類の話はどの夫婦にも起こりそうだから
長年連れ添った夫婦だって一瞬でこうなるものかとか
男と女は結局は理解し合えないとか
男はいくつになっても昔を忘れられないものだとか
観る人によって感想は色々と思う。
ただ、悪人が一人も出てこないのに怖い。45周年の記念パーティのラストに二人が踊る曲。
今年のアカデミー作品賞にノミネートされなかったのが
不思議なくらい良い映画ではあった。
不思議なくらい良い映画ではあった。
結婚して40年くらいたった特に老人の男性にお薦め。
結構くるぜよ。
結構くるぜよ。