1982年1月25日、16才の少年が大阪フェスティバルホール
ポータブル・カセット・
こっそりライブ演奏を録音していた。
ステージには憧れのザ・クラッシュがいた。
パンク好きのお兄さんたちの野太い歓声に囲まれながら
その日風邪気味だった少年はアンコール最後の「白い暴動」まで
固唾をのんでこぶしを握り締め生のクラッシュを見つめていた。
1988年、大学生になった少年は
夏休みを利用してバックパッカーでヨーロッパを旅した。
旅の途中でジョー・ストラマー&ラティーノ・ロカビリー・ウォーが
イギリスで「Rock Against The Rich Tour」をやっていることを知った彼は
後先考えずに7月18日、ブリストルに向かった。
ライブのチケットを買っていたら、
東洋人が珍しかったのかマネージャーに声をかけられ
幸運にもジョー・
「日本の大阪でクラッシュを観ました」
ジョーがとても喜んでくれた。
その後、来日するメスカレロスも観に行ったし
発売されるクラッシュやメスカレロスの記念アルバムもすべて手に
2002年ジョー・
ジョーの20周忌になる2022年はかつての少年も57才になっていた。
彼はここ数年ジョーの12月22日の命日に同じように思いを馳せる
遠くの友人2人とリモートで杯を捧げている。
今年のその日が来る前に彼はふと1982年の
大阪フェスティバルホール
NHKの「ヤングミュージックショー」
写真などと一緒にそのカセット・テープは大切にしまってあった。
出回っている来日中のライブのブートレグと違って
それはまさに彼にとって16才の時のタイムカプセルに他ならなか
40年前の大阪フェスティバルホールの熱狂があった。
特に終盤の観客のノリの凄まじさは今でも鳥肌が立つほどだ。
ただそこはやはり小さなカセットレコーダーで
しかも2階席での録音の音のクオリティは如何ともしがたい。
彼は決心した「音をよみがえらせよう」
その日からCubase Proという宅録用の音楽制作ソフトで
オープニングの「夕陽のガンマン~ガンマンの祈り」から
アンコールの「白い暴動」までの全28曲をマスタリングした。
さらに自分の音源とその日のブートを重ねてマスタリングした。
ところがブートの音源にピッチがずれていることもあり
その修正や自分の小さな咳をつまむなどもして
結局仕事の合間の作業は2週間ほどかかっ
そして2022年版の彼のためだけの
「ザ・クラッシュat 大阪フェスティバルホール1982」はできあがった。
その彼だけのCDRを彼は20周忌のジョーを偲ぶ2人の友
1982年1月25日同じ会場でザ・クラッシュを観ていた3人だった。
30年以上たってから知り合いになった3人だからこそ楽しめるものだ。
でもうちうちだけの私的利用であって売り物ではないものの
著作権か契約法に触れるかもしれないので
当時16才の彼の名前は伏せて「彼」
それでもプレゼントされた2人のうちの1人は私だと書こう。
(このジョーは東京)
以下、1982年1月25日のセットリスト
<大阪フェスティバルホール>
1. Opening (ガンマンの祈り)
2. London Calling
3. One More Time
4. Safe European Home
5. Should I Stay Or Should I Go
6. Know Your Rights
7. The Guns Of Brixton
8. Train In Vain
9. The Magnificent Seven
10. Ivan Meets G.I. Joe
11. Stay Free
12. Clash City Rockers
13. Junco Partner
14. Koka Kola
15. The Leader
16. Somebody Got Murdered
17. Janie Jones
18. Clampdown
19. This Is Radio Clash
20. Armagideon Time
21. Brand New Cadillac
22. Bankrobber
23. Charlie Don't Surf
24. Career Opportunities
25. Complete Control
26. London's Burning
27. White Man In Hammersmith Palais
28. White Riot
今日はオープニングの「ガンマンの祈り」を聴いてみたい。
このBGMが流れると、ほぼ男性の歓声が「ウォーーー!」とあがったものだ。
イタリア制作の西部劇映画マカロニウェスタンの代表作
「夕陽のガンマン」(1967年)の挿入曲
クリント・イーストウッドの主演で音楽はエンリオ・モリコーネ。
しかし「夕陽のガンマン」の音楽を聴いてクラッシュを思い出すのは
あの頃のクラッシュ・ファンだけだろう。
クラッシュ・ファンは40年経っても熱い。
「ガンマンの祈り」エンリオ・モリコーネ