民間団体が昨年行った世論調査によると
中国に対する印象を「良くない」と答えた人は9割にも上る。
私もその9割の中に入るのだが
もしかすると他の人とちょっと違うかもしれないのは
中華人民共和国以前の中国に悪いイメージはないし、
日本の何倍もの長い歴史の中に登場する人物の物語は大好きだ。
入り口は高校生の時の司馬遼太郎「項羽と劉邦」で、
社会人になってからは宮城谷昌光を、それこそ乱読した。
「太公望」「孟嘗君」「楽毅」「晏子」「管仲」「子産」
「重耳」「介子推」「呂不韋(奇貨居くべし)」など。
浅田次郎の「蒼穹の昴」「珍妃の井戸」のシリーズとか
北方謙三にも「水滸伝」だけじゃなく渋い作品がある。
でも一番読んだのは横山光輝他の漫画も含め
色々な人たちが書いた「三国志」だったと思う。
今ブームの、
春秋戦国時代から始まるという「キングダム」は
私は読みも見もしていないが社会現象になっているらしい。
こういうテーマがブームになるなんてすごい。
漫画やアニメやゲームによるアプローチは教材としても役立つはずだ。
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CBSソニーには会社に知ってもらいたいことや
自分の希望などを書く「自己申告書」という制度があって
私はそこに大昔「北京にCBSソニーができたらそこで仕事をしたい」
なんて書いたことがある。
新人発掘部門のSDにいた時はアジア7ヶ国でのオーディションに
中国本土を入れられなかったのがどうにも悔しくて、
上海と北京で中国本土でのオーディションの打ち合わせまでした。
そのために週に一回、中国語会話も習っていた。
どちらの計画も実現しなかったのは結果良かったと思う。
小学4年生の時に心ときめかせたアニメ映画「白蛇伝」の
宋の時代の世界とは当たり前だけどまるで違う国だった。
それでもそんなことをやりたいと思ったのは
今では「印象良くない9割」の中の私だけど
祖父と父から引き継いだDNAのせいだったかもしれない。
父の自費出版した小冊子の中にこんな話があった。
(4年前にも何回か書いているので繰り返しで申し訳ない)
揚州駐留の日本軍にいた26才の父の任務は後方の宣撫工作だったから
中国の一般の人と接する機会が多かった。
旅団司令部のある鎮江まで報告に行くのは運河の定期船利用で、
何回か通ううちには顔見知りになった乗客もできた。
その船には胡弓を弾く流しが乗っており、
父は「孟姜女(もうきょうじょ)」
繰り返しリクエストし歌詞を書いてもらい、自分でも覚えたという。
毎回船でその歌ばかりをせがむ痩せた丸眼鏡の日本人の兵隊は珍しがられ、
いつからか父は中国人の乗客たちから
「孟姜女(もうきょうじょ)先生」と呼ばれるようになった、という。
この他にも、ある大学教授の家族との交流とか
近代史の日中戦争の資料や書物からは想像もできない
若き日本人の兵隊と中国の人と「普通の」ふれあいが何編か書かれている。
父が自分の小冊子につけた「ふれあい」というタイトル、
当時は(邦題としても臭くてダサい)と思った私だったが
他のエピソードとも合わせてよく読んでみると
若い頃に中国で出会った多くの人たちとの「ふれあい」が
終生忘れられなかったのだということが理解できる。
最後に父が書いているのは
「いつの日か、一過性のパック旅行でなく、
自由に滞在できるような旅をしてみたい。
しかし現在の中国では残念ながら望み得ないことで、
当分は実現の見込みはまったくないと言ってよいだろう」
この望みは叶わなかった。
当分どころか「印象良くない9割」が現状だ。
一体、どうなっているんだ。と言っても仕方ないか。
今日は父が覚えた「孟姜女」を。
歌の内容は、秦の時代、万里の長城建設中に埋もれて死んだ夫を悲しんで
妻が慟哭すると長城が崩れ夫の死骸が現れたという中国の民間伝承
マレーネ・ディートリッヒやシャンソン好きの父の本音はここだったかもしれない。
「孟姜女(もうきょうじょ)」
https://www.youtube.com/watch?