自分の36年間のサラリーマン生活を振り返って
一番ドラマチックで楽しかったのは
1990年から6年間のSD制作部時代だった。
ソニー・ミュージックのSD制作部というのは
邦楽の新人発掘を担ういわゆるスカウト部門で、
洋楽からいきなりそこの部長への異動を命じられ
右も左もわからずに戸惑っていた私に
一から仕事を教えてくれたのが「小山さん」だった。
もし小山さんがあの頃SDにいなければ
私のその後はずいぶん変わっていたと思う。
SDはみんなとにかく血気盛んで若かった。
私がいっぺんに20人ほど増やしたスタッフは
毎晩ライブ・ハウスでバンドを見て
その感想をレポートするというのが仕事だったが
今の言葉で言うところの「コンプライアンス」の意識に
多少欠けるきらいのある若者もいたから
私は笑い話のような社是を作った。
「約束を守る」「ケンカをしない」「アマチュアと飲まない」
そんなスタッフを小山さんが兄貴役としてまとめてくれていた。
この時代のSDの人間関係が今でも続いていて濃厚なのは
小山さんの人柄に負う所が大きい。
アウトドア派の小山さんはインドア派の私を
何回もオートキャンプに誘ってくれた。
全国を2人で出張した。
特に五所川原の地吹雪の中、学生服の高校生バンドの
オーディションに行った凍える寒さの記憶は鮮明だ。
その小山さんを私は「一度家においでよ」と誘ってたらしいのだが
先日大森で「ルイジアナ・ママ」を一緒に歌った時に
「あれから24~5年たつんですけど覚えてます?」と言われ
「ゴメンゴメン」と謝って、この日それが実現した。
「今年から酒はやめたんです」という小山さんなので
飲むのは私ばかり。
それでも久しぶりにアナログで古いのを聴いて盛り上がった。
なんてったって、小山さんは元ダニー飯田とパラダイスキングの
何代目かのヴォーカルだから古いポップスはよく知っている。
そんな2人が最後に選んだLPは、現在は湘南在住の小山さんと
高校時代の記憶が甦る私の共通するアーティスト、
先日の火事にめげずに頑張って欲しいということで
加山雄三だった。
「白い砂の少女」「幻のアマリリア」を大音量でかけて
2人大声で歌ってたのがどうもお隣にまで聴こえていたらしい。
今日はこのLPには入っていなかった曲
映画「南太平洋の若大将(1967年)」の主題歌
「君のために」を聴こう。
https://www.youtube.com/watch?
小山さんと過ごしたSDからは、Chara、古内東子、
SIAM SHADE、 平井堅、JUDY&MARY、PUFFY、
ポルノグラフィティ、篠原ともえ 、川本真琴などなどなどなど
キラ星のごとき新人アーティストが巣立って行った。
本当は「デビューしたけど売れなかった」アーティストの方に
思い入れが強かったりする2人だ。