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Channel: レッツゴー!元日本洋楽研究会
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郷土の萩原朔太郎

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<前橋文学館>の入場料は100円。

2階が萩原朔太郎の常設展示スペースとなっている。


入口に置かれた芳名帳には
日本全国から訪れた人の名前が並ぶ。

熱狂的なファンの多い詩人萩原朔太郎だが
地元の人間は意外とクールなので
ここに来たことのあるジモティはきっと多くはない。

それは作品の空気のせいと思われる。
前橋では小学生の頃から(あの当時は)
郷土の偉人萩原朔太郎を授業で習う。
自由詩とか言われても
神経質そうで偉そうで怖そうなオジサンは
子供心に(暗い)とハナから拒否だった。


それがお盆ついでの思いつきで入ったこの文学館。

リッチな医者の家に生まれ母親に溺愛された。
幼い時から音楽を志し、学校は何回も落第、受験も失敗、
転校を繰り返し、39歳にして上京、
その歳で生まれて初めて貧乏を味わう。

どこか陰鬱、病的で、自虐的、
屈折した自己愛、美意識、コンプレックス、
厭世的なようでいながら俗物的なところもあり、
故郷に対する恋慕と嫌悪が交互に出てくる
あの「面倒くささ」はこういう半生に因るようだ。

展示されている、自身の使ったベビーベッド、愛用のギター、
蓄音器、凝ったという立体カメラ、自分でデザインしたテーブル、
「ゴンドラ洋楽会」なるマンドリンクラブを結成した時の楽譜。
(これは今ならさしずめ『バンド』だろう)
道楽とも言えそうなひっちゃかめっちゃかな興味の対象
これはまさに<アーティスト>だ。


明治から大正の前橋じゃ、さぞかし浮いていたことだろう。
展示場を出る時には拒否反応は消え
(意外とダメ男でいいじゃん
みたいに思いながら墓参りに向かった私だった

利根川横の敷島公園にはこの詩碑が立っている
離婚して子供2人連れて前橋に戻る時の情景だそうだ。
いいんだけど、いいんだけど、れまた微妙なのだ。

「帰郷」

わが故郷に帰れる日
汽車は烈風の中を突き行けり
ひとり車窓に目醒むれば
汽笛は闇に吠え叫び
火焔は平野を明るくせり。
まだ上州の山は見えずや。

(ここまでは前橋市民は誰でも知ってる)

夜汽車の仄暗き車燈の影に
母なき子供等は眠り泣き
ひそかに皆わが憂愁を探れるなり。

嗚呼また都を逃れ来て
何処の家郷に行かむとするぞ。
過去は寂寥の谷に連なり
未来は絶望の岸に向へり。

砂礫のごとき人生かな!
われ既に勇気おとろへ
暗憺として長(とこし)なへに生きるに倦みたり。
いかんぞ故郷に独り帰り
さびしくまた利根川の岸に立たんや。

汽車は広野を走り行き
自然の荒寥たる意志の彼岸に
人の憤怒(いきどほり)を烈しくせり。

やっぱ微妙だな。
でも、私に詩を語る資格はないからいいか。


それより、前橋育英、今日はどうだろ
樟南の可愛いピッチャー山下君を打てるかな。


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