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遠い人

憧れの先輩は、洋楽ロック花盛りの70年代初頭、
レコード各社の名物ディレクターたちの中でも
一際目立ってカッコ良かった。
ブリティッシュ系の好きな私にとって
東芝EMIのロック・カタログを仕切りながら
業界を風切って歩く姿は眩しいくらいだった。


他社の人なのに名前で呼ばれると
それだけでもう嬉しかった記憶がある。

「ロックンローラーは水の代わりにビールを飲むんだ」
「ロックンローラーはTシャツに毛皮のコートだけ着る」
本当かどうか知らないけどそのまま信じた。

「エアロスミスの<野獣生誕>って邦題、カッコイイよ」
「CBSソニーは嫌いだけど野中はOKだ」
そんな言葉をかけてもらうと舞い上がったものだ。

 
ビートルズ、ピンク・フロイドの担当として
記事には紹介されることが多いけれど
私にとってはジェフ・ベック、Tレックス、
コックニー・レベル、シルバーヘッドの印象が強い。
スパークスやカルメンは違うかもしれないが
とりあえず東芝のカッコイイのは全部担当してるように思えてた。


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ネタバラシをすればエアロスミスの邦題「野獣生誕」の底には
コックニー・レベルの邦題「美しき野獣の群れ」がある。
モット・ザ・フープルの「華麗なる煽動者」も同じ流れだ。
太い派手な帯も筆文字もコピーの文字数が多いのもそのまま真似した。
 
 
つまり、いつも真似したいパクリたい対象だった。
でも結局洋楽ディレクターとしては追いつけないまま
その人は経営者の道を歩んで遠い存在になってしまう。
 
そんな憧れの洋楽先輩、石坂敬一さんが亡くなった。
昨日が「お別れの会」とは承知していたが
私は通院のために出席することができなかった。
今朝のニュースによれば2300人もの参列だったそうだ。


http://www.musicman-net.com/business/65215.html
 
45年前の六本木、
「パブ・カーディナル」でのグラムロックの打ち合わせに
石坂さんは薄化粧と紫のマニキュアで現れた。
ゆっくりお話したのはそれが初めてだったかもしれない。
9年前の私の退職の時は他社なのにお祝いの席を設けてくれた。
そこで「クラッシュはよくやったよ」と言われ、又々舞い上がったものだ。

いつか「パイレーツ・ロック」で「コックニー・レベル」の
「さかしま」について語って欲しかった。
<ユイスマンスのデカダンス>をあの独特のトークで説明するのを
もう一度聞きたかったしあの頃のように幻惑されてみたかった、と思う。
 
 
でも、私なりの石坂さん追悼の曲はやっぱ感謝を込めてこれだ。
石坂さんが洋楽のスターだった時代の1973年1月日本発売、
「イージー・アクション」Tレックス
 
 

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